2023年春季低温工学・超電導学会 セッション報告

5月31日(水)
A会場

回転機(1) 1A-a01-05 座長 寺尾 悠

本セッションでは、合計5つの発表があった。
京大のGaoら(1A-a01)は、超電誘導/同期モータに関して、かご型回転子のバー部分にREBCOバルクを使用し、これを搭載してモータの運転を行った成果を
発表した。
京大の中村らは、超電誘導/同期モータに関して、液体水素温度(20 K)で運転を行うための50 kW級機の設計例の紹介(1A-a02)や、6 kW級試作機において
パルス電流を注入してモータの始動を行う手法の紹介(1A-a03)及び、移動平均法によるPWM電圧波形を生成してのモータ駆動特性、物理的な特徴の紹介
(1A-a04)を行った。いずれの場合も活発な討論が行われていた。
新潟大の福井ら(1A-a05)は、船舶への応用を目的としてREBCOコイルを用いての20 MW級大型同期モータの電磁設計及び速度制御を行った際の回転特性の解析
を行った結果に関して発表した。


SCSCケーブル 1A-p01-06 座長 王 旭東

京大らはマルチフィラメントのREBCO線材を用いたSCSCケーブルに関する最近の研究成果を発表した。
1A-p01:雨宮(京大)では、開発の概要やケーブル作製の現状について紹介され、直径3 mm以上のコアに幅2 mmのREBCO線材を巻き付けた短尺ケーブルの
試作について報告された。
1A-p02:雨宮(京大)では、Super-GMの70 MW級超電導発電機などをモデルとして、SCSCケーブルによる応用可能性について検討された。70 MW級超電導
発電機に対して、電流密度110 A/mm2を満足するケーブル構成が示された。20-40 Kでの運転を想定して、液体水素によって冷やされたヘリウム
ガスでの冷却についても言及された。
1A-p03:曽我部(京大)では、SCSCケーブルの結合時定数と温度および銅メッキ厚みとの関係について測定結果を報告された。線材のフィラメント間は銅
メッキで電気的につながっており、銅メッキを介した結合損失が生じる。ヘリウムガス冷却の温度上昇過程でノイズの影響を軽減するためサンプルとバック
グラウンドの測定を交互に行われた。測定温度の時間変化に関する質問に対して、1サイクル5分間の測定で2-3 Kの変化であった。
1A-p04:重政(京大)では、線材の積層方向(交差、平行)と磁化損失との関係についての測定結果が報告された。
1A-p05:許(京大)では、線材幅方向に局所欠陥があるマルチフィラメント線材を用いて作製したSCSCケーブルについて、線材内の電流分流に関する測定結果
が報告された。質疑では、欠陥によるn値の低下がどのように影響するかについて問われ、今後検討するということであった。また、劣化がないフィラメントの
電圧が通電とともに直線的に上昇している理由について問われ、原因は不明であるが欠陥が幅方向に進行している可能性があるという回答であった。
1A-p06:曽我部(京大)では、SCSCケーブルのクエンチ解析手法に関する検討が報告された。欠陥がある線材の実験に対して解析結果は概ね一致し、欠陥近傍
のみが発熱・温度上昇していることから、簡略化した一次元熱解析と回路解析の連成による計算手法を提案された。


臨界電流密度・機械負荷 1A-p07-10 座長 金沢 新哲

1A-p07 土屋(東北大) :東北大の土屋グループでは、パルス電流を用いてREBCO線材の臨界電流を瞬間的に測定する方法について紹介があった。この方法では、
高い電流を流せることから、臨界電流が1kA級の高い高温超電導線材でも測定されていた。質疑応答では、瞬時電流によるノイズ(渦電流など)による測定の影響に
ついて質問あり、電流電圧特性の実験データに多少電圧のばらつきがあるが、臨界電流の決定にはほぼ影響がないとの回答があった。
1A-p08 呉(九大): 積層REBCOテープのE-J特性について、4端子法と磁気計測法を使って評価しており、磁気顕微鏡により4端子法による測定結果と同じ程度の
結果が得られたと報告があった。質疑では、積層の影響(線材間の間隔など)を考慮したかの質問があり、今回は解析していないとの回答があった。
1A-p09 井上(福岡工大) :REBCO線材のねじりによる臨界電流の測定結果が発表され、ねじり角度による臨界電流の依存性が報告された。なお、臨界電流が
低下した部位を調べるため、走査型ホール素子磁気顕微鏡を用いて調べていた。ねじりの程度は線材長さと角度で表現しているが、ツイストピッチとして検討する
ことも良いかとの議論もあった。
1A-p10 長村(応用科学研) :REBCOテープ線材の縦曲げひずみと破断挙動に関する発表であり、実験およびモデル計算により評価していた。モデル計算については
単純なモデルより精密な考察が必要ではないかとの意見もあった。




5月31日(水)
B会場

ピンニング 1B-a01-05 座長 木内 勝

1B-a01:下山(青学大)らは、Bi-2223線材の仕込金属組成を変えた線材開発において、X=Pb/(Bi+Pb)とY=(Sr+Ca+Cu)/(Bi+Pb)を仕込金属組成比の指標として、臨界
電流特性へ与える影響を調べた。X=0.197、Y=3.53の線材は20~40 Kのヒステリシスが他の線材よりも大きくなることを示し、Pb置換量の増加と酸素アニールにより
不可逆磁場が改善できることを示した。
1B-a02:吉原(住友電工)らは、フッ素フリーMOD法を用いて、BaHfO3(BHO)ナノ粒子を添加したGdBCO線材を作製した。無添加、BHO2.7 mol%とBHO5.4 mol%の
3つの線材のJcの磁場角度依存性を求め、添加量の増加と共にJcが向上することを示した。
1B-a03:山本(名大)らは、異なる形状のナノロッドを有するPLD-YBCO膜のJc特性向上のために、最適アニール条件、コヒーレンス長、臨界温度Tcの関係を調べた。特に、
Tcの最適アニール温度(400℃)と、最大Jc(77 K)が得られる温度は異なり、さらにコヒーレンス長のアニール温度依存性がピンの形状により変化することを示した。
1B-a04:岡田(東北大)らは、33 T無冷媒超伝導マグネット設計において、コイル内位置に依存する負荷率= 通電電流I /臨界電流Icから、負荷率低減のための人工ピン
形状・分布を議論した。33 T無冷媒超伝導マグネットでは最上部、最下部での負荷率が最大になり、負荷率低減のためにはIcの磁場角度特性のθ = 63°近傍の特性向上と、
ピン形状として短尺ナノロッド形状が有効であることを示した。
1B-a05:馬渡(産総研)氏は、無限に広い超伝導薄膜がマイスナー状態にある場合の縦磁場中臨界電流特性について調べた。磁場中ではマイスナー状態の安定限界である
加熱磁場に達し、マイスナー状態が不安定になる。ゼロ磁場から加熱磁場までのJcを通電電流による自己磁場と外部磁場を考慮して表面磁界を求め、横磁界中の臨界電流
密度Jc⊥と縦磁場中の臨界電流密度Jc//を導出すると、Jc//はJc⊥よりも常に大きくなることを示した。


産業応用 1B-p01-06 座長 野村 新一

1B-p01:三島(福井工大)より,放射線汚染土壌の減容化を目的に多段式の淘汰管により除去対象の粒子を停滞させ磁気分離できる可能性が検証実験に
基づき示された。
1B-p02:秋山(大阪大)より、磁気力と旋回流を組み合わせることで洗濯排水に含まれるマイクロプラスチックを回収除去できる可能性について検証実験
に基づき議論された。

1B-p03:井上(岡山大)より、伝送効率の高効率化の観点から非接触給電システムの超電導化に適した共振回路方式について解析結果に基づき報告された。
1B-p04:伊藤(テラル)より、押し出し加工用アルミビレットを直流磁場中で回転させて誘導加熱を行う手法について、連続加熱試験時における高温超電導
コイルの健全性が評価された。
1B-p05:坂藤(芝浦工大)より、SmBCO系バルク超伝導体を用いた片側開放NMRによって塩化リチウム水溶液の濃度の違いによる自己拡散係数の違いを識別
できることが示され、自己拡散係数の小さいグリセロールや多成分系の自己拡散係数の測定にも成功している状況が報告された。
1B-p06:野島(東北大)より、磁気誘導型ドラッグデリバリーシステムの実現を目的に高温超電導コイルの内側にバルク体を複数個配置することで磁性薬剤
を集積させる磁気力が得られる可能性が解析結果に基づき示唆された。


デバイス応用 1B-p07-10 座長 山梨 裕希

1B-p07:野口(埼玉大)より、STJ検出器のノイズの発生源となる基板のシリコンを除去し、メンブレンに代替した素子の報告がなされた。特に低エネルギー
領域のSN比が改善された。
1B-p08:田中(名大)より、低臨界電流密度ニオブ集積回路プロセスの0.3 Kにおける特性評価の報告がなされた。液体ヘリウム温度に比べ、ジョセフソン接合の
臨界電流値が7%向上した実験結果が報告された。
1B-p09:大西(豊橋技科大)より、STM用のYBCOプローブの作製結果が報告された。低温での実験はまだであり、低温での実験によりYBCOプローブの利点や新たな
機能を利用したSTJの実証ができる。
1B-p10:武田(山梨大)より、臨界電流密度を高めたREBCO薄膜の評価結果と送信用フィルタに用いた時の性能見積もりが報告された。




5月31日(水)
C会場

冷却システム 1C-p01-04 座長 仲井 浩孝

「冷却システム」セッションでは、4件の発表があった。
1C-a01:高木(東芝ESS)ら、および1C-a02:高橋(東芝ESS)らは、並列流路にガスを循環させて複数の超伝導機器を冷却するための温度制御シミュレーション
および流量計開発についての発表を行った。PD制御における熱物性値の非線形性の影響、3つのガス流量調整弁のそれぞれの開閉による干渉、流量測定に
おける応答時間等についての議論が行われた。
1C-a03:松本(JASTEC)らは、クライオスタット内の液体窒素および液体ヘリウムの蒸発量を減らすためのGM冷凍機を用いた冷媒蒸発抑制装置を開発した。
この装置をNMRマグネットに導入する際の費用対効果や窒素とヘリウムの物性の違いに起因する制御の違い、GM冷凍機の冷凍能力と制御用ヒーター出力との
関係等についての議論があった。
1C-a04:渡邉(中部大)らは熱侵入量が多層断熱材の巻き付け強さに依存するかどうかを実験的に確認した。多層断熱材を3種類の異なる巻き方で測定を行ったが、
大きな違いは見られなかった。巻き付け強さの違いによる断熱材層間の圧縮圧の差異ではなくて、断熱材層間の熱的な短絡や局所的な層数の違いが熱侵入量
に関係していそうである。


小型冷凍機 1C-p01-05 座長 根塚 隼人

1C-p01:松本(愛媛大)から、磁性蓄冷材Gd2CuO4のCuサイトにNi.Znを置換した際の磁性や熱物性についての実験結果が報告された。
1C-p02:増山(大島商船高専)から、低速動作4 K冷凍機の蓄冷器サイズ依存性について実験パラメータを参考にしたREGEN3.3による数値解析結果が報告された。
1C-p03:胡(同済大学)から、液体水素冷却を想定した2段パルス管冷凍機の数値シミュレーション結果について報告された。
1C-p04:許(同済大学)から、ダブルインレットとイナータンスチューブを備えたパルスチューブ冷凍機の実験結果が報告された。
1C-p05:保川(富士電機)から、パルスチューブ冷凍機の初期設計での適用を目指す計算ツールについて、自作の計算ツールを含めた3種類の計算ツールと実験
データとの比較結果が報告された。


液体水素 1C-p06-09 座長 島崎 毅

1C-p06:髙田(NIFS)等は、市販の極低温用温度計の自己発熱量を大きくし、熱線流速計のような計測が可能か調べ、流速に依存した信号を得られる事を確認した。
但し、温度計ごとに特性がばらつき、また、圧縮・膨張に伴う流れの温度の変化を受け測定の時定数が長くなることが分かった。
1C-p07:河江(九大)等は、振動ワイヤー法を活用し、金属細線試料のヤング率が水素の吸蔵・脱離によって変化する様子を観測し、マクロな材料評価指標としての
応用を試みた。ヤング率と水素の吸蔵・脱離の関係、またヤング率を材料の機械特性の評価指標として採用した理由について質問があった。低温のクライオスタット
内でヤング率を計測する技術を確立できておりその技術を応用したとのことであった。
1C-p08:章(神戸大)等は、3Dプリンターで作成した樹脂製のヘリカル流路を利用した新たな液体水素用流量計の歪変形数値シミュレーションと流量計としての適合性
評価を行った。流体の圧縮性や表面粗さ、助走区間の扱いについて質問があった。今後検討していくとのことであった。
1C-p09:福本(山本電機)等は、MgB2線材と非超電導線材を平行に設置する新たなセンサー構造を開発し、水素タンク内の気相部分の圧力変化に起因する液面検出精度
の低下を改善した。今後はより液体水素温度に近づくようTcを下げた線材の開発も行う。




5月31日(水)
P会場 ポスターセッションI

計測システム 1P-p01-02 座長 高畑 一也

1P-p01:青木(KEK)からは、12月からの運転再開を計画しているSuperKEKB加速器およびBelle II測定器の、超伝導磁石と冷凍システムのモニタリングシステムに、
ひずみゲージのデータを統合するための、計測系の開発状況が報告された。ひずみゲージのデータは、今回新たに製作したブリッジボックスを介し、データロガーで
収集し、加工後に、EPICSと呼ばれる加速器では一般的なオープンソースソフトウェア環境で参照できるようになった。この改良により、ひずみゲージデータが他の
データと一緒に、リアルタイムに参照・比較できるようになる。
1P-p02:土屋(東北大)からは、高温超伝導線材の臨界電流測定(高電界特性測定)のための、矩形波パルス電流源の開発について発表があった。矩形波パルス電流を
用いると、焼損のリスクが低減し、今回の実証実験においても、DC電源に比べて1.5倍の電流まで通電することができたと報告があった。パルス電源の課題は電流オーバー
シュートであり、電源回路内の複数の素子パラメータの組み合わせを変更し、電流振動を最小に抑えることに成功した。本研究を発展させ、1 kA級のパルス電源を開発した
とのコメントがあった。


磁性材料 1P-p03 座長 沼澤 健則

当セッションはポスターで1件の発表が行われた。
1P-p03:小椋隆平(愛媛大)等は、60 K領域で大きな体積比熱をもつEr粉末のミリング効果について報告した。これはEr粉末に機械的な歪みを入れることで、比熱のピーク
温度を制御しようとする試みである。ミリング時間の増加に対し比熱の形状は変化するものの、体積比熱はむしろ減少する傾向となっている。今後の研究に期待したい。


HTSコイル解析 1P-p04-07 座長 馬渡 康徳

REBCOコイルの電磁気的・熱的挙動に関する数値シミュレーションについて4件の報告があった。
1P-p04:大石(早稲田大)は、無絶縁REBCOパンケーキ・コイルの局所劣化(抵抗発生)を検出する方法について数値解析を行った。コイル内部磁場の変化を検出する
ピックアップ・コイルの電圧を監視する方法は、パンケーキ・コイル両端電圧を監視する方法に比べて、高い感度かつ速い応答で劣化を検出可能であることを示した。
1P-p05:吉藤(早稲田大)は、無絶縁REBCOコイルの遮蔽電流磁場を等価回路モデルのみで数値解析する方法について報告した。コイル径方向とテープ線材の幅方向の
依存性をともに考慮し、磁束侵入を相互インダクタンスと超電導層の抵抗により表現した等価回路モデルにより、精度良くかつ速やかに解析可能であることを示した。
1P-p06:間藤(北海道大)は、無絶縁高温超電導マグネットの熱的安定性について、空間分布を無視した簡単な熱平衡方程式の解析解により評価する試みについて報告した。
1P-p07:日浦(早稲田大)は、スケルトン・サイクロトロン用の無絶縁REBCOコイル・システムの熱的安定性に関する数値解析について報告した。コイル・システムを
構成する円形コイルおよび非円形セクター・コイルのいずれか一つに局所劣化(抵抗)が発生したときの電磁的振る舞いについてそれぞれ考察した。


送電ケーブル 1P-p8-10 座長 山口 作太郎

二件の発表であったので、時間を掛けて丁寧に話を聞いた。野地氏の発表では、今までに研究発表された超電導ケーブルの交流損の実験結果と計算との違いが
どうして生まれるか? 計算と実験が合うようになるかを聞いた。同時に、このような計算を行う基本的なmotivationについても議論を行った。折角、時間とお金を
使って研究を行うのであるため、もう少し詰めてから研究テーマを選ばれることを勧めた。
呂氏の発表(1P-p09)は、既存のソフトを使い、多くの仮定の下で事故解析を行っていた。しかし、事故解析を行うための仮定の検討がまだ不十分であった。今後、
改善されることが望まれる。


超電導応用(1) 1P-p11-13 座長 川越 明史

本セッションでは,3件の発表があった。
1P-p11の長(東北大学)らは,HTSテープ線を用いた超電導磁気シールドの遮蔽性に関して,REBCO線を用いた場合とBSCCO線を用いた場合の遮蔽電流の減衰
時定数を測定し,両者を比較した結果を報告した。
1P-p12の高橋(学習院大)らは,超伝導バルク磁石を用いた卓上磁気浮上装置の着磁工程における磁場‐温度特性について報告された。また,磁気浮上装置
の応用として,浮上分離とタンパク質結晶成長への展開について紹介された。
1P-p13の西川(阪大)らは,超伝導バルク磁石を用いたレアアース泥の選鉱に関する検討内容が報告された。南鳥島周辺の深海堆積物から発見されたレア
アース泥から,アパタイトに吸着されたレアアースを取り出すことによって,レアアース濃度を高める手法に関する検討結果であった。磁気アルキメデス法
によって,分離できる可能性があることが実験的に示されていた。選鉱作業は船上で行う想定とのことであった。どのようなバルク磁石が望ましいのかなど
について議論されていた。




6月1日(木)
A会場

医療用加速器 2A-a01-06 座長 曽我部 友輔

2A-a01:石山(早大)らは、α線放出用RI製造用「高温超伝導スケルトン・サイクロトロン」の開発に関する進捗を報告した。サイクロトロンとして実用化する場合の
トリムコイルを使ったアクティブシミングの可能性などについての議論があった。
2A-a02:折原(早大)らは、高温超伝導スケルトン・サイクロトロンに関連する要素技術を取り入れた1/2スケール実証用REBCOコイルシステムの通電試験について
報告を行った。ホール素子での磁場測定に関して、課題として考えられる励磁遅れ及び遮蔽電流磁場を評価するのに十分な精度があるかなどの質疑が行われた。
2A-a03:島田(早大)らは、回路解析のみによる無絶縁REBCOコイルの遮蔽電流磁場解析手法を開発し、これをコイル両端電圧評価に用いた結果を報告した。解析
結果に表れるステップ状の振舞いなど、解析精度に関する質疑が行われた。
2A-a04:植田(岡山大)らは、1/2スケール実証用REBCOコイルシステムのひずみについて、ひずみゲージを用いた実験結果と数値解析結果を比較して報告した。
遮蔽電流による不均一な応力の影響を考慮しても説明できないひずみが実験結果として得られており、詳細な原因を精査しているとのことだった。
2A-a05:荘(阪大)らは、ECRイオン源に応用するための無絶縁REBCOコイルの開発について報告した。実際にコイルアセンブリを製作し、これらのコイルを同時に
励磁することによって発生する磁場を測定した。ECRイオン源へREBCOコイルを適用する際に期待されるインパクトなどについて質疑が行われた。
2A-a06:吉田(住友重機械)らは、陽子線治療向けサイクロトロンのためのNbTi超伝導マグネットの励磁試験結果を報告した。実際の製品試験に準じたコイル試験を
行い、冷却試験、励磁試験、クエンチ保護試験などについて報告した。コイル位置合わせの方法やビーム照射時の温度測定位置など、具体的な試験方法に関する
議論が行われた。


HTSコイル・解析 2A-a07-09 座長 東川 甲平

2A-a07:小畑(三菱電機)らは、液体水素冷却発電デモ機向け高強度REBCOコイルの検討という題目で、コイル軸方向の圧縮応力によるコイルの劣化とその
解決策について報告した。少し幅の広いSUSを共巻にすることや、コイル全体をSUSのケースで覆うことなどを解析により検討した結果、SUSケースで覆う手法
が効果的であるという知見が得られていた。そのメカニズムの説明や定量的な安全性の担保が今後期待される。
2A-a08:藤田(フジクラ)らは、大口径10 T級REBCOマグネット開発における10 T級テストコイルのクエンチ試験について報告した。その振る舞いは事前の検討
と一致しており、実験的にコイルを劣化なく保護できていた。また、質疑討論の時間には、線材のIcとコイルのIcの関係についても議論があり、線材の自己磁場
IcからコイルのIcが定量的に予測できているということで、同社の線材の再現性の良さを印象付けていた。
2A-a09:金沢(室蘭工大)らは、人工ピン入りEuBCOスプリット線コイルの液体窒素蒸発法による交流損失の測定評価について報告した。111本の刃によって線材
の長手方向に筋を付けた線材によって小型のコイルを作製し、側面から外部磁界の印加した際の液体窒素の蒸発量によってそのコイルの交流損失を評価していた。
加工による線材の電流容量への影響や、実際のコイルの使用条件との相違に関する議論があった。




6月1日(木)
B会場

REBCO薄膜・バルク作製(1) 2B-a01-04 座長 内藤 智之

本セッションでは以下の4件の発表があった。
2B-a01:藤本(九大)Zr細線がパターニングされたSrTiO3基板を用いることでYBCO薄膜のマルチフィラメント化を試みた。SrTiO3上では結晶化したYBCO膜が、
一方Zrパターン上では配向性の悪い膜がそれぞれ生成され,本手法がマルチフィラメント化に有効であることが示された。
2B-a02:元木(青学大)一方向溶融成長(SDMG)法によってリング形状の大型REBCO溶融凝固バルク(RE=DyおよびY)が直接育成できることが報告された。DyBCOリング
バルク(外径28.7 mm,内径7.9 mm,厚さ11.5 mm)のボア中心で捕捉磁場1.84T(於77 K)が得られており今後の進展が期待される。
2B-a03:仙波(青学大)SDMG法で結晶方位の異なる種結晶基板を用いるとa軸もしくはc軸成長領域のみを有するDyBCOバルクが育成でき、a軸成長領域バルクが<c
成長領域バルクよりも高い臨界電流密度Jcを示すことが示された。従来のTSMG法バルクと異なる結果であり、Jcに対する配向性や成長速度の影響が興味深い。
2B-a04:川崎(東京農工大)Mg気相輸送法で作製したMgB2バルクに対するCu添加効果について報告された。MgB2+Bの前駆体にCuを添加したところMgB2の生成が促進
された。Cu添加により生成されたMg2Cuが熱処理温度850℃では液相となり前駆体内部へのMgの拡散を促進したためと解釈された。


バルク作製(2)・バルク着磁 2B-a05-08 座長 元木 貴則

本セッションではバルク作製、着磁評価に関して4件の発表があった。
2B-a05:箱石(岩手大)らは、ステンレスのボール材を用いてボールミルした原料を用いてAg添加GdBCO溶融凝固バルクの育成と物性について報告した。溶融凝固時
の最高保持温度を系統的に変化させることで、再現性良くバルクが育成できる条件を明らかにした。得られたバルクのTcはGdBCO本来の値に比べてやや低く、ステン
レス由来の金属元素置換、Gd/Ba固溶など様々な要因が考えられ、今後の解明が期待される。
2B-a06:今道(海洋大)らは、バルクを船舶用の回転機内部に用いることを想定した40 Kにおける単一パルス着磁での捕捉磁場向上に関する報告を行った。パルス
着磁過程をリアルタイムでモニタリングし、ネガティブフィードバックをかけてパルス波形を制御することで発熱が大幅に抑制され、パルス着磁として非常に高い
捕捉磁場が達成された。本手法は、パルスを用いたバルク着磁として画期的であり、今後のさらなる進展が期待される。
2B-a07:横山(足利大)らは、バルク磁石の両面を磁石として利用する応用を想定して、バルク上下面をそれぞれパルス着磁した結果について報告した。通常評価
される種結晶配置側の表面だけでなく、底面部についてもパルス着磁後の捕捉磁場は同程度であることが示された。
2B-a08:Jiahao(足利大)らは、パルス着磁時の捕捉磁場特性をシミュレーションにより数値解析した結果について報告した。GSB/GSRのJcの違いや、バルク厚み方向に
Jcが異なる場合についても取り入れて計算している。今回はJc分布が2層に分かれている場合であり、着磁特性に大きな影響はないことが示された。今後は厚み方向に
Jcが徐々に変化する場合についての解析の進展が望まれる。




6月1日(木)
C会場

計測・基礎 2C-a01-05 座長 槇田 康博

本セッションでは、ひずみゲージを用いた計測に関して2件と、接触熱伝達、核―膜沸騰熱伝達、極低温での電気抵抗に基づく事象について、それぞれ1件ずつ
の講演があった。
2C-a01:杉原(神戸大)等は、ヘリカル仕切り板が内蔵されたFRP菅を用いた流量計の開発を目指した基礎実験として、真空(陰圧)も含む静圧印加時の円筒配管部
の歪を測定し、試験結果からFRP円筒のヤング率を算出していた。これをどのように流量計に展開していくのか質疑があった。
2C-a02:神田(中部大)等は、ブリッジ回路を用いないで、ひずみゲージの抵抗変動分だけを抽出する測定系を提案し、実際にモデルを対象にしたひずみ測定の結果
を報告していた。ブリッジ回路に代わって無負荷時のゲージの電圧をキャンセルする電圧源を付加し、その参照電圧との差分を計測するようにしている。
2C-a03:上野(東芝、講演は高橋(東芝))等は面圧をかけた銅ブロック同士の接触熱抵抗を3-60 Kで実測したデーターを示し、理論式と比較した。接触熱抵抗の
面圧への依存性は理論式と同じ傾向(面圧の-0.95乗)を示した。一方で温度の依存性では、銅の熱伝導率への反比例に相当する-1乗では説明できない-0.25乗の
高い依存性が示された。そのメカニズムは不明だが、温度が下がるほど接触熱抵抗は急峻に上昇するので、超低温領域の機器での接触伝熱を前提にした熱設計は
避けた方が良いと感じた。


低温超電導化合物 2C-a06-08 座長 杉本 昌弘

低温超電導化合物のセッションでは3件の発表があった。
「2C-a6:伴野(NIMS)」は、4Ta、4Ta-1Hf、2Ti、2Ti-1Hf (at%)を添加したNb合金のCu被覆単芯テープに対し、Snメッキ後に熱処理を施して生成させたNb3Sn層の組織を
観察した。Hfの酸化が無い状態において、Ta-Hf添加のNb3Sn結晶粒はTi-Hf添加よりも微細化される傾向があることを示した。内部スズ法とブロンズ法におけるTi添加
効果の違いについて議論があった。
「2C-a7:浅井(上智大) 」は、10Cu、5Cu5Zn、5Cu5Ge、5Cu5Ti(at%)をSn芯に添加したNb3SnテープのNb3Sn 層の組織を比較した。Sn拡散駆動力の高い内部スズ法では、
Zn添加が結晶粒微細化に寄与することを示唆した。
「2C-a8:金木(岩手大)」は、PbMo6S8超電導バルク体を、石英管真空封入、SUS管Arガス封入、Nb介在させたSUS管Arガス封入の3条件で試作した。Nb介在により
バルク体への不純物残存が抑制され超電導特性が向上(Jc ~104  A/cm2 @1 T, 8 K)したが、実用化には更なる(Jc向上が必要だとした。




6月1日(木)
P会場 ポスターセッションII

MgB2(1) 2P-p02 座長 下山 淳一

2P-p02 小黒(東海大)らは最近、MgB2とY123のハイブリッド丸線の検討を進めており、今回はNbシースMgB2の外周にY123層を配し、最外層がAgの試料について報告
があった。熱処理はMgB2にのみ行っており、Y123層は原料粉末の焼成後の冷却時に吸った酸素によって超伝導になった粉末を充填しただけであるが、MgB2の4.2 Kでの
臨界電流の磁場依存性が著しく小さくなるという新しい現象を見出した。


バルク作製(3) 2P-p03 座長 山本 明保

2P-p03:竹村(芝浦工大)らはEr-Ba-Cu-O 超伝導接合材を用いた局所溶融法によるGd-Ba-Cu-O 接合バルク超伝導体を作製し、その接合部特性を報告した。
従来は偏析が生じるために(110)方向の接合方位が適切とされていたが、結晶成長速度を制御することで(100)方向でも良好な接合特性が得られることを、
EPMA元素マッピング゙、磁化測定から明らかとした。


HTS電流分布・解析 2P-p04-08 座長 土屋 雄司

2P-p04:山口(九工大)らは、短尺1層REBCOケーブルについて、液体窒素中通電試験ついて報告した。Icは想定より8%低く、低温ハンダを用いた接触抵抗
の再現性が課題である。質疑では、電流掃引速度を増加させると分流が抑制される可能性があるとした。今後、減圧液体窒素、縦磁場中での試験を行うと
のことである。
2P-p05:髙橋(福岡工大)らは、REBCO線材の電極付近の転流の実験およびFEM計算について報告した。実験と計算は一致したが、空間分解能が30 mmと小さい
ことが課題である。
2P-p06:白土(福岡工大)らは、フォトリソグラフィーを用いたREBCO薄膜のマルチフィラメント化について報告した。Zrバンクの幅5 µm以上では絶縁に
成功したが、幅2 µmでは絶縁不良であるとした。今後、ACロス評価が望まれる。
2P-p07:耿(東海大)らは、溶融法を用いたYBCO丸線作製法について報告した。Y211とBa-Cu-OのAgシースPITにより線材を作製し、大きな空隙ができた一方で
Y123が結晶成長したとした。今後、XRD、Ic測定の報告が望まれる。
2P-p08:温(九工大)らは、微小振動磁場中の超伝導体における端近傍λでの磁束運動に関して、2次元TDGL方程式を用いたシミュレーションについて報告した。
解析理論通りに可逆な磁場変化が起こるとした。


回転機(2)・磁気軸受(1) 2P-p09-13 座長 福井 聡







6月2日(金)
A会場

回転機(3)・磁気軸受(2) 3A-a01-04 座長 平野 直樹

本セッションでは、液体水素冷却高温超電導発電機、誘導電動機用超電導回転子、全超電導回転機の電機子コイル、ならびに超電導磁気軸受の熱解析
評価についての4件の口頭発表があった。
3A-a01:大屋(関学)らは、NEDO先導研究において、液体水素冷却高温超電導発電機の研究開発を行っている。あえて低いIcのREBCO線材を用いた計6個の
ダブルパンケーキコイルからなる2極コイルを試作し、液体水素浸漬冷却下で限界通電特性を検証し、熱暴走することなく安定に通電できることを確認した。
3A-a02:鳥居(鹿児島大)らは、電動航空機への応用を目指した全超電導誘導電動機の研究開発を行っている。空芯の超電導回転子に流れる誘導電流の
評価方法を確立するため、円筒形のピックアップコイルを用いて磁気モーメントを測定し、理論値とよく一致する結果が得られている。
3A-a03:三浦(九大)らは、全超電導回転機における電機子コイルの大電流容量化に向け、並列導体の素線間電流分流を簡易に計算する手法を開発した。
2本並列導体を用いたサンプルコイルの実験結果と比較し、簡易解析手法は電流分流率を10%以内で予測できており、解析手法の妥当性が確認された。
3A-a04:宮崎(鉄道総研)らは、高温超伝導バルクとコイルからなる磁気軸受に対し、回転するバルクを冷却するための希釈ガスヘリウムを考慮した熱回路
網モデルを構築した。冷却過程を実験結果と比較検証し、解析が実験結果を良く再現できていることが示され、設計ツールとしての有用性が確認された。


核融合 3A-a05-09 座長 有本 靖



超電導応用(2) 3A-p01-04 座長 津田 理

3A-p01:山口(中部大)より、超電導直流ケーブルの短絡電流特性評価のためのBi2223線材とRE123線材における短絡電流通電時の電流電圧特性の測定結果が報告された。
3A-p02:東川(九大)より、再生可能エネルギーの利用効率向上に対して、エネルギー貯蔵機能を有する超電導ケーブル(SMESケーブル)が有効であることが報告された。
3A-p03:濱本(九工大)より、スクライビング加工されたRe系コート線材を丸形状のフォーマに巻き付けた丸形状導体の作製方法や通電試験結果が報告された。
3A-p04:押川(鹿大)より、複数のREBCOテープ線を束ねた並列導体における偏流現象の抑制には、テープ線幅広面への垂直磁場印加が有効であることが報告された。




6月2日(金)
B会場

超電導・低抵抗接続 3B-a01-05 座長 松本 明善

「3B-a01:高島(産総研)」はNbN超伝導粒子を用いてペーストを作製し、スクリーン印刷法で厚膜の作製に成功したことを報告した。さらに、NbTi-薄膜-
パッド/Nb3Al/NbTi-薄膜-パッドの接続抵抗の温度依存性から、NbNに起因する15 Kから11 Kまでの緩やかな抵抗低下と、NbTi薄膜の超伝導転移に起因する
7.5 Kでの急激な抵抗低下の2つの超伝導転移が確認された。また、本製品を販売予定であることも報告した。
「3B-a02:山口(青学大)」は補強材のないDI-BSCCO® Type H線材間の超伝導接合技術を確立し、さらにNi合金テープ補強高強度Bi2223線材(DI-BSCCO®
Type HT-NX)間において実用的な接合Icを有する超伝導接合の開発に成功したことを報告した。現在のところ補強材が変わっても補強材無しのものと同等の
性能が得られることを示した。
「3B-a03:武田(NIMS)」は(Bi,Pb)2Sr2Ca2Cu3Oy (Bi-2223) 超伝導接合技術の開発に取り組んできている。接合のマグネット応用にむけて、この技術を高強度
なNi合金補強Bi-2223線材 (DI-BSCCO® Type HT-NX) に適用する必要があり、1本の高強度線材の両端を超伝導接合して作製した閉ループ試料に対して、
磁場減衰測定により接合抵抗を評価した結果を報告した。
「3B-a04:金沢(室蘭工大)」は室蘭工大で開発しているマルチジャンクション法と呼ばれる複数箇所による接続部を作製する手法でBi2223線材感の超伝導
接合を達成しようとしている。短尺の試料において77 Kで50 A程度の接続に成功しており、小型コイルを作製し、永久電流を流し、測定結果を報告した。
コイルにおいても50 A程度の電流が流せていることを示した。
「3B-a05:成嶋(NIFS)」は積層REBCOテープを低融点金属で含浸したWISE導体において、温度20 Kの条件下で通電試験を実施したことを報告した。通電試験
では、19 kAまで通電した際に電流フィーダー部のREBCOテープに焼損が発生したが、超伝導導体の部分は電圧の発生もクエンチも焼損も発生しなかったこと
から、問題は電流フィーダーとREBCOテープの接続構造にあると考えている事を報告した。シミュレーションによってフィーダー部分の流し込みを最適化する
ことで、電流の不均一な流れを解消できる可能性を示した。


HTS長尺・導体化 3B-a06-09 座長 柁川 一弘


3B-a06:木須(九大)らは、200 m長のREBCO線材を対象としてリール式高速磁気顕微鏡により取得したテープ面内の磁化電流分布画像を機械学習
させて局所的臨界電流低下部位を自動検出するシステムを構築するとともに、欠陥の統計性について考察した。
3B-a07:吉田(名大)らは、核融合炉用の大電流導体への適用を目指して、従来のREBCO積層導体で素線間の電流転流を阻害する中間層による絶縁
を回避するために、素線間に銀でマイクロパスを設けた積層導体を試作し、その有効性を実証した。
3B-a08:D. Garfias-Davalos(総研大)らは、複数のREBCO線材を単純積層した核融合炉用HTS導体を対象に、通電電流を高速掃引して保持した際の
不均一電流分布や発生磁界の緩和を観測するとともに、インダクタンスを考慮した数値解析も実施した。
3B-a09:長村(応用科研)らは、国際電気標準会議(IEC)における標準化活動の一環として、アジア−欧州間の超電導ケーブルによる直流送電を
モデルケースとして、基礎となる線材特性、資源量、製造コスト、関連する諸技術の要求性能等を試算し、その実現性を提案した。




6月2日(金)
C会場

安定性・保護 3C-a01-04 西島 元

田中(3C-a01, 上智大)は、LNI-REBCOコイルにおける層間接触比抵抗安定化のために導電性エポキシを用いることを提案している。接触界面の
接触比抵抗は熱サイクル・接触圧力変化・電流増大でも値は一定していることから導電性エポキシはLNIコイル保護や層間接触比抵抗制御の観点
から優れていると報告した。
大池(3C-a02, 千葉大)は、素線間絶縁の無い並列HTS導体を用いたNIコイルの外部磁場が変動したときの電流挙動と熱的安定性を解析した。誘導
される電流はコイルの1ターンで流れ、並列数が増加すると誘導される電流が増加すると報告した。
今川(3C-a03, NIFS)は完全安定化された超伝導導体の回復電流を計算するときの熱伝導率の扱いについて、液体ヘリウム温度においては熱伝導率を
一定値とすることでも大きな問題とならないが、熱伝導率が極大値をとる温度(約20 K)よりも高温側では熱伝導率の温度依存性を考慮する必要が
あると報告した。
島本(3C-a04, 総研大)はCu線とNbTi/Cu線とを撚り合わせた導体のクエンチ伝播について液体ヘリウム中で実験を行なった。電圧端子取り付けの
ためのハンダによってクエンチ伝播の様子が変化するが原因は不明であると報告した。


MgB2(2) 3C-a05-08 座長 石原 篤

3C-a05:松本(NIMS)らは、内部拡散法MgB2線材作製方法に焦点を当て、これまでの実験データを学習データとして、ベイズ最適化手法により熱処理
条件の最適化の探索を報告した。質疑応答では、学習データが一定の温度域のみに偏っているので、学習データ用にパラメータを大きく変更した試料
を敢えて作製すべきとの議論があった。
3C-a06:関口(青学大)らは、B過剰の出発組成からMgB2粉末を作製し、その圧粉体にMgを拡散することで高充填率の試料の作製に成功し、2 T以下の
低磁場領域において、高価なPavezyum社製B粉末を上回る特性を報告した。
3C-a07:田中(日立)らは、SUSとMonelの併用による18芯のMgB2線材を作製し、可逆歪みがSUSのみ用いた線材の0.44%から0.6%まで改善したことを報告
した。質疑応答では、SUSの焼き付きの問題からMonelを最外層にすることが望ましいこと、より高い過電流特性が必要な場合はCuの厚みを厚くして対応
することなどの議論があった。
3C-a08:前田(Kangwon国大)らは、熱処理条件を変化させた試料を作製し、SEM観察からは熱処理条件に関わらず六角柱のような粒が形成されること、
XRD測定からは熱処理条件によって002ピークがtail shapesを持つようになり、結晶子サイズが変化していることなどを明らかにし、MgB2の層内と層間方向
の構造異方性が輸送臨界電流特性へ与える影響を報告した。


加速器用HTSマグネット 3C-p01-04 座長 柳 長門

本セッションにおいて、以下の4件の発表があった。
3C-p01 土屋(KEK): SuperKEKB加速器への利用をターゲットとして高温超伝導(HTS)マグネットの製作経験の蓄積とその特性評価が行われてきている。
今回は、特に、ノーマル成分とスキュー成分の両方の六極磁場強度を独立に調節できる「特殊六極マグネット」用の試作REBCOコイルの製作と試験について、
一連の報告が行われた。
3C-p02 王(KEK):特殊六極マグネットとしてノーマルとスキューの各6個の矩形レーストラック形状REBCOコイルを製作して、冷却励磁試験が行われた。
コイルはエポキシ含浸されている。実測されたインダクタンスは計算と1%以内で一致、抵抗遮断の波形も予測どおり、再励磁後も健全性が確認された。コイル
間接続抵抗も規定値を満たしている。
3C-p03 有本(KEK):製作された特殊六極マグネットの磁場測定がハーモニックコイルを用いて行われた。六極磁場成分に対する多極磁場成分の強度比が
5×10-4以下であることが確認された。一方、二極成分は予測より大きく、コイル寸法のバラつきが原因として考えられ、調査を行っている。
3C-p04 王(KEK):次世代加速器への適用をめざしてkA級の大電流導体の開発も並行して行われている。REBCO線材を用いて、構造としてはCORC導体に類似
した丸型導体が試作された。温度4.2 K、磁場18 Tにおける実効臨界電流密度は110 A/mm2に至ると評価され、n値を含めた詳細特性が議論されている。併せて、
曲げひずみに対する臨界電流劣化の依存性が調べられ、導体構造との関係が議論されている。